バリスタを目指したきっかけは?
サンフランシスコに留学中、いくつものカフェを巡りました。国籍や年齢、職業など背景の異なる人々がおいしいコーヒーを飲みながらコミュニケーションを深め、情報を発信していく「カフェ文化」に魅了されました。当時、日本ではまだバリスタという職業はあまり知られていませんでしたが、サンフランシスコのバリスタの方々と話すうちにどんどん興味が湧いてきました。世界中から運ばれてきた色々なストーリーを持つコーヒー豆の魅力を引き出し、コーヒーを通してお客さまとコミュニケーションする仕事は素敵だなあと。自分で実際にエスプレッソを入れてみると、ちょっとした条件の違いで驚くほど味が変わり、とても奥が深い世界だと思いました。
デビット・ショーマー先生との出会いについて教えてください。
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2000年にサンフランシスコで開催されたSCAA(アメリカスペシャルティコーヒー協会)でデビット・ショーマー先生と出会い、そのとき淹れていただいたエスプレッソの味に衝撃を受けました。それまでエスプレッソは苦みが強いという印象を持っていましたが、先生のエスプレッソは苦みだけでなく、甘さ、酸味、コクなどのバランスがすばらしく、この味を目指そうと思いました。それ以来、ショーマー先生に師事し、2005年には「ベストバリスタ」の評価をいただきました。
お店について教えてください。
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2010年4月、山下公園通り沿いの横浜人形の家の1階にオープンしました。場所柄、お子様からご年配の方まで幅広い年齢層のお客様がいらっしゃいます。また、日本全国から来ていただくこと、リピーターのお客様が多いことも特徴ですね。カフェラテを注文されたお客様にはお席まで行ってラテアートを実演したり、お子様向けにチョコレートをベースにしたメニューを用意するなど、幅広い方々に楽しんでいただけるよう心がけています。 毎週一度、ショーマー先生の「Espresso Vivace」で焙煎した豆をシアトルから空輸してもらっています。この豆は全米一という評価を獲得していて、「Espresso Vivace」のお店以外では当店でしか飲むことができません。コーヒー豆は生鮮食品と同じで時間の経過と共に品質が劣化していきます。当店では一週間で使い切る量を毎週仕入れることで、常に最高の状態の豆を使ったエスプレッソを提供しています。
お使いのマシンについて教えてください。
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ラ・マルゾッコのstrada EP-2を2011年12月に導入しました。ショーマー先生も私もずっとラ・マルゾッコのマシンを愛用しています。その理由はグループヘッドごとに独立したコーヒーボイラーが搭載されているため、常に一定の温度で安定した抽出を行うことができるからです。EP-2は抽出圧もコントロールできることも画期的ですね。おかげで豆のよさを余すことなく引き出したエスプレッソを淹れることができます。
strada EP-2の感想を教えてください。
最大のメリットは温度が安定していて、混雑時でも狙い通りのエスプレッソを抽出できること。ミルク用のスチームボイラーもとても安定しています。EP-2は温度や抽出圧を細かく設定することができ、最適の条件を記憶させることができます。また、ステンレス製のためクリーニングがしやすいことも気に入っています。 お客様から「今まで飲んだコーヒーの中で一番おいしかった」「エスプレッソってこんなに豊かな味だったんですね」と言われることがありとても嬉しいのですが、それもこのマシンが豆のよさを引きだしてくれているおかげだと感じています。
マシンを使う際、注意している点はありますか?
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このマシンは温度や圧力などを細かく設定できるため「自分が出したい味」を理解していないと使いこなすことができません。味の基準が明確でないと、どうすればいいか迷ってしまうのです。バリスタには自分が出したい味(感性)と、どうすればその味を出せるか(理論)の両方が必要だと思います。出したい味が明確なら、EP-2はバリスタの期待に十分に応えてくれます。無限の可能性を秘めた面白いマシンだと思います。
バリスタを目指す人へのアドバイスをお願いします。
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女性のバリスタも増えつつありますが、女性ならではの感性を活かして、もっと活躍してもらいたいですね。 私がいまバリスタとして、オーナーとして、自分の出したい味のコーヒーを飲んでいただいているのですが、それはすべてお客様や先生、さまざまな方々との出会いのおかげです。最近強く思うのは、「すべては人」ということ。人との出会いを大切にし、人に感謝することが一番大事なのではないでしょうか。そして、バリスタを目指される方にはたくさんの店を飲み歩いて、「自分の出したい味」の基準をつくっていただきたいですね。私自身はショーマー先生の出す味が基準になりましたが、その後もアメリカやイタリアのカフェを常に飲み歩いています。
今後の目標をお聞かせください。
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横浜は歴史がありながらも、常に新しいものを受け入れ発信してきた土地です。横浜ならではのカフェの楽しさ、カフェ文化をもっともっと全国に発信していきたいですね。最近当店ではお湯の上にエスプレッソを落としたカフェアメリカーノが人気です。ミルクを使わないので豆の味をダイレクトに味わうことができます。また、お客様が「こんな味のコーヒーを飲みたい」とリクエストされ、ヒントをいただくこともあります。既成観念にとらわれることなく、コーヒーのおいしさ、楽しさをさらに広げていきたいですね。