バリスタを目指したきっかけは?
コーヒーに興味をもったきっかけは、兄(CAFÉ ROSSO 門脇洋之さん)と同じで、父が自分のコーヒー店で自家焙煎を始めたことでした。それまでコーヒーは好きではなかったのですが、父のコーヒーは酸っぱくなくておいしかったんです。高校卒業後、大阪の洋菓子店で修行したのですが、自分がバリスタとロースター、パティシエのすべてをこなすお店を出したいと思いました。
どのように修行されましたか?
大阪から地元の島根に戻ってきて、平日は父の店(サルビア珈琲)、週末は兄の店(CAFÉ ROSSO)でコーヒーについて学びました。イタリアにも2週間ほど行って飲み歩き、ヴォルテッラという小さな街のカフェで働きました。そのとき経験したバリスタとお客様とのコミュニケーション、人間としての心のふれあいが今のお店のコンセプトにつながっています。その後、バリスタの競技大会にも出場するようになりました。技術の向上につながったのはもちろんですが、いろんな人の考え方を聞くことができたのが有意義でした。
お店について教えてください。
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オープンは2002年で、今年11月27日に無事10周年を向かえました。周辺は住宅街なので、職場でも家庭でもない空間、気楽においしいコーヒーを飲みに来ていただく「日常のかくれ場所」を目指しています。豆を仕入れて自分で焙煎し、抽出する。ケーキもすべて手作り。自分の店でつくり、管理できる商品、この店に来ないと味わえない商品だけを出しています。ですから食事メニューはありません。
お使いのマシンについて教えてください。
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オープン当時は別のメーカーのマシンを使っていました。ジャパンバリスタチャンピオンシップの指定機種だったので使ってみたところ、エスプレッソ用とスチーム用のボイラーが別々のため、きちんと温度管理ができること、抽出するときれいな酸が出ることから、ラ・マルゾッコのマシンはいいなと思いました。店には2005年、2007年にラ・マルゾッコのマシンを入れ、現在はstrada EP-3を使用しています。
strada EP-3の感想を教えてください。
手動で圧力を変え、むらしを行えるのは画期的です。ぼくが目指すエスプレッソはオイルがしっかりと出て、飲んだときインパクトがあり、飲んだあと柑橘系の酸の余韻があるもの。パッとはじけて、ぱちぱちと余韻が残る仕掛け花火のような味。むらすことでオイルをしっかりと出し、ガスが適度に残る理想の味を実現できます。このマシンに変えてからエスプレッソの注文が増えました。あるお客様から「イタリアで飲んだエスプレッソの味がした」と言われたときはうれしかったですね。絹のように滑らかなスチームドミルクを作ることができるのも大きな特徴。抽出用とスチーム用のボイラーが分かれているので、何杯入れてもスチームが枯れない点も気に入っています。
マシンを使う際、注意している点はありますか?
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抽出時に手動で圧力を調整するため、とても忙しい。圧力や温度、落ちていくエスプレッソの状態、カップの中も見なくてはならないので、集中力が必要です。また、このマシンの能力を引き出すには、これまでの常識に縛られないことが大切です。これまで30秒で30ccが常識でしたが、最近は45秒で20ccとより濃厚なエスプレッソを抽出しています。こういう味が好きだから、マニュアルでこうしたいという人に向いていますね。ぼくもまだこのマシンの実力の60%くらいしか使っていないと思うので、これからが楽しみです。
これから開業する人へアドバイスをお願いします。
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お客様が家でつくることができるものを出すのではなく、その店に行かないと味わえないものを出すことが大切です。そして、たとえば食事は出さないと決めたら、そのスタンスをなるべく崩さないこと。もう一つ大事なのは向上心。これくらいでいいと思わず、あらゆることに疑問符をつけて考え、解決していく姿勢が必要だと思います。コーヒーに心身ともに没頭することで、お客様に認めていただける価値あるものをつくってほしいですね。
今後の目標を教えてください
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コーヒーというものを通してみんなと遊びたいんです。コーヒーを売るだけでなく、お客様とのコミュニケーション通じて、信頼関係を築いていきたい。バリスタが必要とするようなロースターにもなっていきたいと思っています。また、同業者向けのセミナーを開催したり、困ったこと、わからないことがあったら何でも聞くことができる「コーヒーの病院」のような存在になりたいですね。兄と私は性格もアプローチの仕方も全く違うのですが、相談し合うことで共に成長して行きたいと思っています。