バリスタを目指したきっかけは?
父がサルビア珈琲というコーヒー店をやっています。父は私が中学生のときに自家焙煎をはじめたのですが、そのコーヒーを飲んでみたら非常においしかった。コーヒーは焙煎の具合や抽出する器具によって自分好みの味をつくることができると知り、面白いと思いました。その後、スターバックスの登場に衝撃を受け、エスプレッソのルーツをたどるため、イタリアへ飲み歩きに。ミラノのCovaというカフェでこれだという味に出会い、その味をぜひ再現したいと考えました。
お店について教えてください。
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CAFÉ ROSSOは1999年にオープンしました。父のお店は重厚な雰囲気でお客様の年齢層も高かったのですが、私はもっと若い層に本物のコーヒーのおいしさを知ってもらいたいと思い、明るく開放感のあるインテリアにしました。そして2011年11月、コーヒー豆販売を中心としたお店にリニューアル。カフェスペースを減らし、より焙煎に集中することで、さらにおいしく丁寧なコーヒーが提供できるようになりました。
バリスタのコンテストに積極的に参加されていましたね?
はい。2003年のワールドバリスタチャンピオンシップでは7位になりました。そのときのチャンピオンであるポール・バセットさんの味に衝撃を受け、それが新たな目標になりました。私は雲の上だったポール・バセットさんに認めてもらいたいとチャレンジを続け、2005年のシアトル大会では準優勝することができました。しかし現在はポール・バセットさんとも違う、後味にかすかな酸味を感じさせるオリジナルの味を追求しています。
お使いのマシンについて教えてください。
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ラ・マルゾッコのstrada EP-3です。開店当初は別のメーカーのマシンを使っていましたが、ラ・マルゾッコのマシンを一度使ってみると大変すばらしいと感じ、世界バリスタチャンピオンシップの指定機種だったこともあり、使い始めました。各グループ用とスチーム用にボイラーが独立しているため、たくさん入れても湯温が変わらず、安定した抽出が行えます。また、湯温、圧力などを自由に設定できるので、自分の狙い通りの味を出すことができます。
設定を変えられると、どのようなメリットがあるのですか?
最初から9気圧をかけるのではなく、まず3気圧でむらし、それから圧力を上げて抽出することができます。私の理想のエスプレッソはしっかりとした強い味を持ち、すーっと口の中に入ってきて、後から華やかな酸味(花の香り)がやってくるもの。このマシンを使うことで、その味を出せるようになりました。スパウトがきれいにV字にカットされていて、エスプレッソの色や落ち方を確認しやすいのもいいですね。バリスタの意見を取り入れた使いやすさは素晴らしいと思います。
※「スパウト」=「抽出口」
マシンを使う際、注意している点はありますか?
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湯温や圧力など設定の自由度が高いので、セッティングの方向性をきちんと決めることが大切です。やみくもにいじくるとどうしたらいいか分からなくなりますので。また忙しくていっぱい使うときと、あまり使わないときとではマシンの状態も変わってきます。常にそのときのマシンの温度や状態を見極めるようにしています。
マシンへの要望はありますか?
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スチームワンドとグループヘッドの位置が離れており、スチームをレバーで操作するので、一人で抽出しながらスチームドミルクをつくるには、やや使い勝手が悪いと感じています。スチームワンドとグループヘッドとの距離をもう少し近づければよいのではないでしょうか。しかし、ラ・マルゾッコは私たちバリスタの意見や要望をしっかり取り入れてくれるので、次のマシンではしっかり改良してくれると思います。
※「スチームワンド」=「スチームノズル」又は「蒸気ノズル」
バリスタを目指す人へのアドバイスをお願いします。
やはりエスプレッソの原点であるイタリアへ行き、本場の味を知った上でアプローチしてほしいですね。飲み歩くことで、これだという味に出会ってほしい。抽出などのテクニックも大事ですが、自分の本当に好きな味を見つけて、それを再現しようと努力することがより大切です。お店を出される方も自分が本当に好きな味、自分にしか出せない味をお客様に届けてほしい。そうすることで、お客様――ファンを増やしてくことができます。
今後の目標をお聞かせ下さい。
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究極のエスプレッソを目指して、豆選び、焙煎、ブレンド、パッキング、エイジング、抽出のプロセスすべてに妥協なく取り組んでいきます。特に力を入れたいのが焙煎。バリスタとしてだけではなく、ロースターの仕事をもっと極めたいですね。世界に通用する自分にしか出せない味をずっと追い求めていきたい。いつか世界的に有名なシェフたちに私のコーヒーを使ってもらうことが夢です。